この記事では、フットサルの戦術の中でも特に難しいとされるクアトロについて解説します。
フットサルのクアトロにはさまざまなローテーションの種類が存在し、Fリーグや海外の試合を見ても複雑さゆえに簡単に理解することは難しいです。
しかし、この記事ではクアトロのメリット・デメリット、ローテーションの種類、練習メニューなど、詳しく解説しています。
そのため、この記事を読むことでフットサルのクアトロに関する理解を大幅に深めることができます。
少々ボリューミーな記事となってしまいましたが、最後までお読みいただけると幸いです。
クアトロではなくクワトロである。
クワトロ(quatro)とはスペイン語で4を意味し、4分の1を意味するクォーター(quarter)もそこから派生している。
フットサルのクワトロとは?
フットサルのクワトロとは、上図のような後方に4人を配置するフォーメーションである。
クワトロの特徴は、前方にフィールドプレーヤーを配置しないことにある。
そのため、クワトロには以下のようなメリットがある。
- 前方に広大なスペースがあるため、裏抜け等が成功しやすい
- 4人が流動的に動くことで相手DFを混乱させることができる
しかし、クワトロは自陣にスペースがあまりなく、その対策として流動性が求められるため、運動量、技術力、戦術理解力が必要不可欠である。
チームによっては攻撃のゾーンによって4-0、2-1-1、3-1とフォーメーションを使い分け、特に回避のときだけ4-0を使用し、ハーフラインを超えたら3-1に変化するチームもある。
また、ピヴォが居ないチームには消極的な理由でクワトロを採用せざるを得ないが、ピヴォがいるチームでも自陣で背負うプレーで戦術の幅が広がるためクワトロでもピヴォは重宝される。
クワトロのローテーション(旋回)の種類
フットサルのクワトロにはさまざまな動き方、つまり多種多様なローテーション(旋回)が存在する。
クワトロのローテーション(旋回)を完全に分別することは難しいが、次の4つに大別することができる。
- 2人ローテーション(2人旋回)
- フィクソ固定型3人ローテーション(軸ありクワトロ)
- サイド固定型3人ローテーション(3人旋回)
- 4人ローテーション(4人旋回)
活用されるローテーション(旋回)の割合はチームによって変わってくるが、クワトロではこれら4つのローテーション(旋回)を織り交ぜる、あるいは繰り返しながらゴールを目指す。
この記事では、4つのローテーション(旋回)について徹底解説する。
フットサルのクワトロの基本原則である4レーン理論とは?
フットサルのクワトロのローテーション(旋回)は、4つに大別されると述べたが、すべてのローテーション(旋回)において共通する基本原則が存在する。
それがクワトロにおける4レーン理論である。
クワトロのすべての戦術において、ピッチを縦4等分割(5m×4)して考えることが非常に重要である。それぞれのレーンに一人ずつ入ることでフロアバランスを保つことを意識する。
仮に同じレーンに2人入ってしまった場合はどちらかが別のレーンに移動することでフロアバランスを回復させる。上図の場合、赤1番がディアゴナルで抜けたのを認知して赤3番が赤1番が元々いたフィクソのポジションにスライドする。
ディアゴナルで抜けた赤1番にパスが出せない場合、赤1番は再び後ろに戻って元の配置に戻る。
①クワトロの2人ローテーション(2人旋回)
2人旋回は上図のように隣り合わせのアラとフィクソが入れ替わえながら、フィクソ2枚での二人組の関係を連続して作っていく。
- バックドア(ワンツー)
- ディアゴナル
- パラレラ(中パラ)
ディアゴナルは先程の基本原則で紹介した局面である。
このようにフィクソ2枚で行うセンターレーンでのワンツーを中ワンツーと呼ぶ。
2人旋回はクワトロのすべてのローテーションの中でも一番簡単で初心者にも理解しやすいローテーションであるため最初の導入にはうってつけだが動きを相手に読まれやすいデメリットがあるため、上のカテゴリーのチームで2人ローテーション単体でクワトロを行うチームはほぼない。
ただ、他のローテーションと組み合わせて部分的に2人ローテーションを用いることはある。
2枚抜け
クワトロにおける攻めのアクションの選択肢として2枚抜けは非常に有効である。
なぜなら、前方に2つのパスラインができる&相手守備のカバーを間に合わなくできるからである。
裏へパスが出せなければフロアバランスを回復して元に戻る。
②軸有りクワトロ(フィクソ固定型3人ローテーション)
3人ローテーションは3 on lineとトライアングルを連続的に形成する多種多様な攻撃を創り出せるプロでも一番多用されている戦術である。
初期配置とオープニング
初期位置はお椀型or3 on line+1の2パターンが主に考えられる。
お椀型の場合、結果的に上図のように3 on line+1を作りに行く。
3 on line の形成
3 on lineは相手DFを3 on lineに食いつかせることで相手DFが形成した複数ラインを吸収し、破壊する意図がある。
この局面では3 on lineでの崩し全般が可能となる。
詳しくは3 onlineの個別記事を読むことを強く推奨するが、代表的な崩しをいくつかここで取り上げる。
サイ抜けとスキップパス
3 on lineの真ん中の選手が抜けて3人目になる崩しは一番王道な崩しで非常に有名である。
一見、強力な崩しに見えるがマーク交換対応してくるチームには全く通用しない。
そのような相手の場合は次に紹介するバックドアを利用するのを推奨する。
マーク交換を利用したバックドア
相手守備がマーク交換したのを逆手にとって背後を狙う。
3 on lineの攻撃に対してマーク交換で対応してくるチームに非常に有効。
アラコルタでライン間を突破
相手守備青2番が赤4番へのスキップパスをインターセプトしようとしてきた場合は表側が空くのでアラコルタが有効になる。
アラコルタで受けたあとそのままドリブルで相手守備を剥がせれば3vs2の数的優位を作ることができる。
トライアングルの形成
3 on lineでの打開が厳しい時は逆サイドにボールを展開する。
3 on lineを中間ポジションに居た赤2番は赤3番を水平サポートする。
この時重要なのは赤2番はサポートに早く入りすぎてフィクソの赤1番からのパスラインを消さないようにトライアングルをしっかり意識することである。
この図のように赤3番にボールが出る前に赤1番から赤2番へのパスラインが消えてしまうと赤1番の選択肢が減ってしまいはまってしまう可能性がある。
逆サイドへボールを展開してトライアングルを作る時は継続的にパスラインを形成するために赤2番は赤1番からのパスラインを確保しながらゆっくりとライン間へのサポートをするのが重要である。
エントレリネアス(ライン間)の利用
相手守備がゾーン気味で1列目にマーク交換の基準がはっきりしていれば、背後からまわってライン間を利用するのが有効である。
ライン間でボールを受けたあとはターンするか赤3番へパスする選択肢が主に考えられる。
二人組の関係
トライアングルが形成できたら赤1番(フィクソ)は赤2番or赤3番にパスし、二人組の関係を作る。
- バックドア(ワンツー)
- パラレラ
- ブロックorカーテン
三角形+1 逆アラのバックドア
トライアングルに相手DFが気を取られ、逆アラのマークが疎かになることが多
2枚抜け
赤2番のパラレラに加えて軸になっているフィクソがディアゴナルで抜けることで2枚抜けした場合、赤4番が後方に下がって軸(フィクソ)になる。
2枚抜けをする場合はあらかじめインプレー中のサインを決めるのが望ましい。
③3 on lineの再形成(ローテーション)
二人組の関係で打開できない時は再び3-on-lineを形成して、今までの流れを左右反転させて繰り返す。
回避に成功出来るまでこのローテーションを無限に繰り返す。
ご覧の通り、赤1番はフィクソで固定されているのでこの一連の流れをフィクソ固定の旋回(軸ありクワトロ)と位置付けている。
このローテーションではフィクソが固定されるので後方に決まった選手を配置したい時には有効な戦術であり、プロで一番多用されている。
後ろに決まった選手を配置するメリットは次の2つである。
- 足元の技術の高い選手を配置することでボール回しを潤滑にする
- ボールを失った時に備え守備の上手い選手を配置できる
④クワトロの4人ローテーション(4人旋回)
概要
このクワトロが4人が同じ方向にぐるぐる回転することで連続的に三角形(トライアングル)+1作り出す戦術である。
軸ありクワトロはフィクソが1枚固定になるが、この旋回は全員が流動的にローテーションできる。
時計回り、反時計回りどちらも可能だが、今回は反時計回りに限定して解説する。
どちらに旋回するかはチームの選手の利き足等の特徴を考慮してあらかじめ決めるのが望ましい。
初期配置とオープニング
- ボールをフィクソからフィクソにパス
- 逆アラがライン間に入ってトライアングルを形成
- パスを出したフィクソ(赤1番)は幅をとってフロアバランスを回復させる
初期配置からライン間に一人入ってトライアングルを作ると狙われやすくなるので、最初はお椀型から開始するのが望ましい。
トライアングルの形成
軸ありクワトロと同様に三角形+1を形成する。
ここでのエッセンスは軸ありクワトロと全く同じである。
三角形+1と逆アラのバックドア
赤3番が空けたスペースを赤1番が走り込むことで逆アラのバックドアが有効になる。
これが4人旋回クワトロの真骨頂と言っても過言ではない。
二人組の関係
同様にサイドでの二人組の関係での打開を試みる。
打開できそうにない場合は赤4番が中ドリして、赤3番はサイドレーン(赤4番が居た場所)に移動して元の配置に戻る。
元に戻る
元のトライアングル+1の状態に戻ると大きく3パターンの選択肢が考えられる。
ライン間(エントレリネアス)の利用
ゾーン気味の相手であれば有効な選択肢。
ターンできるのであれば速やかにターンして3vs2を作る。
ターンができなければ、再び二人組の関係を作る。
(最悪赤4番へのリターンパスをしても問題ない)
逆アラの利用
赤4番の体の向き的には一番安パイな選択肢。
赤2番と赤1番で二人組の関係を作って打開を試みる。
ターンorピサーダで同サイドのアラを利用
赤4番がマイナス気味に中ドリしているのであれば、ピサーダが有効にはたらく。
補足:横の3 on line
軸ありクワトロ含めて、サイドで二人組の関係を作るときに横の3 on lineができるケースが多い。
その場合は赤1番は背後のパスラインを確保した上でスルーして抜けて3人目になるのが有効である。
フットサルのクワトロの練習メニュー
4レーン分割ゲーム
クワトロゼロでは4つのレーンを意識して配置のバランスを考えることが非常に重要なため、ピッチをフラットマーカー等で分割して制限をつけたゲームを行うのが有効である。
- 4人が別々のレーンに入ることを意識(2人が同じレーンに入ったら片方が出る)
- 自陣で同じレーンに2人が2秒以上入ったら終了
【コラム】2人組の関係はフットサルのクワトロに欠かせない
クワトロは4人で形成されるフォーメーションであるため、クワトロの集合の中に3人組の戦術(トライアングル+3 on line)があり、さらにその中に2人組の関係、個人戦術が内包されていることは決して忘れてはならない。
つまり、質の高いグループ戦術を行うためには以下の順で取り組む必要がある。
- 個人戦術
- 2人組の関係
- 3人組の関係(3 on line、トライアングル)
- クワトロ
ある程度クワトロの全体像が把握できたら、まずは基本的な2人組の関係の質を高めることに注力するのが望ましい。
個人戦術、2人組の関係などの基本は決して疎かにしてはならない。
まとめ
今回はクワトロのローテーションについて解説しました。
今回は型にはまった有名な戦術を解説しましたが、必ずしもこれらがチームにとっての最適解になるとは限りません。
盲目的に真似するのではなく、チームに合ったプレーモデルを自分たちで考えて共有することが非常に大切です。
今回は解説しませんでしたがボランチを利用したクワトロ戦術なども存在しますので余裕のある人は考えてみてください!
今回の内容を理解してFリーグを見るだけでも試合の見え方が変わり非常に面白く感じれると思います。
是非どこかで今回インプットした内容をアウトプットしてみてください。
最後まで記事を読んでいただき誠にありがとうございます。
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